私たちは風邪を所有しているのか

わが社だけなのかもしれないが、インフルエンザや風邪に過剰反応している職場になっている。
一人が風邪を引けば、インフルエンザではないか、自分にうつるのではないか、ということを例えば咳をするたびに言うのである。
感染するかもしれないのはそうだろう。可能性はゼロではない。しかし、それほどインフルエンザや風邪は、そういった態度で忌避されなければならないことだろうか。


別の話をする。インフルエンザはウイルス疾患である。これに限らすほとんどの風邪症状はウイルスによるものだ。インフルエンザは重症になることもあるが、それは他のウイルス疾患にも言えることだ。感染力の強弱もあるがインフルエンザもその他の風邪も、性質は同じだと思う。
さらに、こうしたウイルス疾患は人から人への感染のみで広がるものではない。ウイルスは常に私たちの周りに存在しており、私たちの体は体調とのバランスをとるための戦いを毎日行っている。その戦局が劣勢に傾いたときにだって風邪になるのである。
私たちが風邪を引く原因が、目の前で風邪をひいている人から出ていると思われているウイルスによるものだという証明は不可能である。原因はもともと自分の中にあるのかもしれないからである。目前で咳をされても、直ちに全員が感染するわけではないのは、自分の中の戦局の優劣が感染を左右しているからである。


私が、"他人の風邪が自分にうつることを過剰に拒否する人"の態度に気持ち悪さを感じるのは、上記のような理解がなく、風邪は必ず他人から感染するものだという信憑に取りつかれていると考えるからだ。
こうした態度をとっている人の話を聞いてみると、過剰反応は"○○さんの風邪"という言葉をよく使う。風邪に罹患している人の中にいるウイルスやバクテリアは、その人の所有物であり、悪意を持ってそれをまき散らしていると思っている。


私は、顕微鏡でも見えないようなウイルスやバクテリアに所有権を設定するという発想に狂気を感じるし、だいたい風邪ごとき(インフルエンザも含めるが)でガタガタ言う者は、底が知れると思うのである。