村上春樹「アンダーグラウンド」を読む

村上春樹の「アンダーグラウンド」を読む。


最近本を読み始めて「アンダーグランド」も前知識なく読み、衝撃を受けた。
・・・衝撃というか、長い旅から帰ってきた、そんな気分だ。


アニメ「鋼の錬金術師」のホーエンハイムは、自らの身体が賢者の石になってしまった後、自分の体の内にあるエネルギーになってしまった数多の人間たちと対話し、長い旅の中で膨大な時間をかけて話を続け、そして分かり合っていくという場面がある。そんな旅の途中の気分である。
もちろんこの本で語られていることに終わりということはない。あったとしても私が生きている間にはおそらくない。そんな命題をここで今消化することも不可能なことだと思う。しかし、本を読み終えた今、これをどうするのか考え続けなければならないと思っている。


それでも、少し思ったことを述べておく。
この本を読むまでは、この事件は、新興宗教の毒ガステロであるという認識だったのだが、それが一方的な、悪に満ちた、異常で、狂気の沙汰であったわけではないのだなと思った。ここに登場してきたたくさんの被害者の言葉にも、ある側面からすればちょっとずつ「悪」があって「異常」で、「狂気」をふくんでいる。それは被害者自身が自覚しているか否かは別にして、その自覚が、こういった事件を語る上で、わりと大事なのかなと思った。


これは、余談というか不謹慎な話だが、本自体になにかオーラというか、前記した「鋼の錬金術師」でいうと、この本自体が賢者の石のような感じがする。文章にエネルギーが宿っているというか、そんな感じがした本だった。


アンダーグラウンド (講談社文庫)

アンダーグラウンド (講談社文庫)